断熱塗料とは、熱伝導を抑える効果を持った塗料です。建築物の外壁や内部に塗布することで、室内温度が快適に保たれて節電が期待できるなど、いくつかの効果をもたらします。
ここでは、断熱塗料により得られる4つの効果、および遮熱塗料との違いや耐用年数についてご説明します。
試験により得られた断熱塗料のデータも多数公開しているので、断熱塗料の効果についてリサーチしている場合はぜひご参照ください。
1.断熱塗料とは
断熱塗料とは、熱伝導を抑える効果(断熱効果)のある塗料です。
室外と室内の熱移動を抑制するため、夏場は室内を外気温より涼しく、冬場は室内を外気温より暖かく保つために役立ちます。断熱塗料は、比較されがちな「遮熱塗料」よりも高価な傾向にありますが、遮熱塗料にはない断熱効果があることから、施工対象によっては投資対効果の高い塗料になり得ます。
以下記事にて、国内の代表的な断熱塗料について比較しました。主要メーカーにおける断熱塗料の特性が気になる方は、本記事とあわせてこちらをご参照ください。
2.断熱塗料により得られる4つの効果
断熱塗料を使うことにより得られる共通の効果は、主に以下の4つです。
- 室内を快適な温度に保つ
- 節電効果を発揮する
- 防音効果が高まる
- 結露防止が期待できる
それぞれ、どのような効果を得られるのか解説します。
2-1.室内を快適な温度に保つ
断熱塗料は熱伝導を抑えるほか、太陽光線の反射性能(遮熱性能)も備わっており、気温が高くなる夏場には室内を快適な温度に保つ効果(遮熱効果)があります。
また、室内と室外の熱移動を抑制する特性により、冷暖房設備の効果を高められるため、夏場には涼しく、室内に熱源がある冬場※には部屋を暖かく快適な温度に保ちます。
※冬場に太陽光のみで室内を暖めようとする場合、断熱塗料が有する遮熱性能によって無塗装屋根と比較すると室内温度は低くなってしまいます。
弊社が販売している断熱塗料『WAKOECO® SHIELD(ワコーエコシールド)』を用いた試験では、塗料の有無によって夏場における屋根表面に19.5℃の温度差が確認されました。
塗布対象となる屋根の材質、そのほかの環境要因により遮熱効果・断熱効果の程度は左右されますが、異なる時期に実施した以下の実験でも27.3℃の温度差を計測しています。
2-2.節電効果を発揮する
断熱塗料により得られる副次効果として、節電効果が期待できます。
前述したように、断熱塗料による太陽光の反射および熱伝導の抑制は夏場の暑さによる室温上昇を抑え、暖房器具等を室内に設置する冬場は室温低下を防ぎます。結果として、冷暖房設備の稼働を最小限にできるため、消費電力は減り節電効果が期待できるのです。
夏場・冬場にエアコンを稼働させた環境下で、WAKOECO® SHIELD(ワコーエコシールド)を使用して消費電力量を比較したところ、以下のような効果が確認されました。
このデータからも、断熱塗料の塗布により節電効果が得られるのだと判断できます。
2-3.防音効果が高まる
セラミックスを配合したは、一般的に販売されている機能性のない塗料と比較して塗布部分の表面は厚くなる傾向にあります。音は空気の振動により伝わるため、断熱塗料を塗布して特定の箇所に厚みを持たせることで、防音効果を高めることが可能です。
たとえば、屋根部分に断熱塗料を塗布すると、屋根をうつ雨音が室内に届くことを防止できます。
2-4.結露防止が期待できる
壁面についた水滴は、放置するとカビを発生させる原因となるため、結露はとくに衛生の観点から防止したい現象です。
結露の原因は、外気により冷えた壁面と室温の温度差であるため、断熱塗料の塗布により壁面と室温の差を小さくすると結露の防止が期待できます。
なお、結露により発生するカビは健康に悪影響を及ぼすだけでなく、建物にも被害を与える可能性があります。たとえば木造建築物の場合、結露により壁や柱部分が水を含んでいる状態が長時間続けば、腐敗して強度が低下するのです。
断熱塗料を内外装へ使用することで、内部結露と呼ばれる目に見えない場所に生じる結露も防止できるため、結露による人体や建物への被害を抑えたいときに断熱塗料は効果を発揮します。
3.断熱塗料を使うデメリット
断熱効果が期待できるほか、節電や防音、結露対策としても機能する断熱塗料ですが、以下のようなデメリットもあります。
- 一般的な塗料より費用がかかる
- 満足できる断熱効果を得られる保証はない
断熱塗料の塗布を検討する際は、施工対象(住宅や工場など)が抱える課題を一度洗い出し、断熱塗料の塗布よりも適した方法がないのか調査することで、上記のようなミスマッチは避けられます。
3-1.一般的な塗料より費用がかかる
一般的に販売されている機能性のない塗料と比較すると、断熱塗料は高価な傾向にあります。安価な塗料より耐久性に優れているとはいえ、費用対効果を考慮せずに施工すれば、かけたコストに対する満足度が低くなる可能性があります。
ただし、外壁塗装にかかる費用の内訳は、塗料の種類だけではなく塗布面積・建物の状態によって変わり、さらに人件費や足場代が発生するため一概に「断熱塗料だから高額になる」とはいえません。大切なのは予算に収めつつ要望を叶えることであるため、塗装工事に求める諸条件を決めてから、まずは見積もりをとることを推奨します。
3-2.満足できる断熱効果を得られる保証はない
断熱塗料は室内と室外の熱移動を抑制しますが、昨今の住宅に使われる断熱材に比べると断熱性能は劣ります。とくに、設計段階から断熱性を意識した建物に塗布する場合、断熱塗料の塗布による効果を感じられない可能性があります。
塗装工事を実施したあとに悔やむことのないよう、事前に施工対象とする建物の現状把握を専門家に依頼し、断熱塗料により求める変化を得られるのか調査すべきでしょう。
4.断熱塗料と遮熱塗料の効果の違い
断熱塗料と遮熱塗料は、どちらも太陽光線の反射性能を備えているため、夏場に室内の温度を快適に保ちやすい点では共通しています。
ただし、以下の点で断熱塗料と遮熱塗料には違いがあります。
- 断熱塗料:太陽光を反射し、熱の吸収を防いだうえで、室外と室内の熱移動を抑制する
- 遮熱塗料: 太陽光を反射し、熱の吸収を防ぐことに特化している
断熱塗料は太陽光による熱の吸収を防ぐと同時に、室内の熱が室外に放出されることも抑制します。一方、遮熱塗料は太陽光による熱の吸収は防ぎますが、室内の熱を保つ効果は期待できません。
断熱塗料は夏場と冬場に効果を発揮し、遮熱塗料は主に夏場に効果を発揮する塗料だといった区別ができます。
以下の動画ではWAKOECO® SHIELD(ワコーエコシールド)と他社遮熱塗料をそれぞれ鉄板に塗装し、下からの照明(無塗装面側)の熱で、塗装面に置いた氷の変化にどのような影響があるか比較しています。
この実験からWAKOECO® SHIELD(ワコーエコシールド)では塗装面と無塗装面の熱移動が抑制されていることがわかります。
ただし、断熱材と比較すると断熱塗料の断熱効果は劣るため、断熱塗料はあくまでも「断熱材が利用できない環境下」において効果を実感できる塗料だといえます。
価格面を比較すると、断熱塗料よりも遮熱塗料が安価な傾向にあるため、建物によっては遮熱塗料が費用対効果に優れる可能性も念頭においておくべきでしょう。
5.断熱塗料の効果はどのくらい持続する?
断熱塗料の耐用年数は、10~15年前後を公称する製品が多い傾向にあります。
WAKOECO® SHIELD(ワコーエコシールド)も、一般環境下における期待耐用年数は10~15年以上となっており、これは一般的なアクリル塗料やウレタン塗料と比較すると2倍程度の耐久性にあたります。
断熱塗料のデメリットとして費用の高さを取り上げましたが、安価な塗料に比べて耐用年数が長い製品も多いことから、一概に断熱塗料の経済性が劣るとはいえません。
長期的に効果や景観が保たれる塗料を使用するのか、費用面で負担の少ない塗料をこまめに塗り替えるのかは、住宅であればライフイベント、オフィスや工場であれば今後の事業計画によって判断する部分です。塗料の耐用年数と次回の塗装工事を見据えて、断熱塗料を使用するかどうか決めることをおすすめします。
6.断熱・防露・不燃・省エネ効果に優れた断熱塗料
弊社が販売する『WAKOECO® SHIELD(ワコーエコシールド)』は、国外で特許を取得し、日本国内においても2020年に権利化された断熱塗料です。断熱塗料のメリットとして解説した断熱効果、節電効果や防露効果はもちろん、高い不燃性や空気質改善効果も備えています。
ここでは、WAKOECO® SHIELD(ワコーエコシールド)の主な効果をいくつか取り上げて、ご紹介します。
6-1.遮熱機能・断熱機能による冷暖房効率をアップ
WAKOECO® SHIELD(ワコーエコシールド)は、熱移動を抑制する断熱機能だけでなく、太陽光線を反射させる遮熱機能を備えています。
太陽光線を反射し、室内外の熱移動を抑える機能は、一年を通じて冷暖房設備の運用を効率化します。
前述したように、実際の試験では冷暖房設備の消費電力量が15~20%程度削減できました。
6-2.塗装部分は空間温度に適応して結露を抑制
結露は、冷えた壁面に室内の暖かい空気が移動して起こりますが、WAKOECO® SHIELD(ワコーエコシールド)を塗布することで壁面が空間温度に適応します。
優れた防露性によりカビの発生を未然に防ぎ、後述する空気質改善とあわせて人体への悪影響を抑えることが期待できます。
6-3.国土交通省の不燃材料認定を取得した不燃性
建材試験センターの不燃性試験(金属板を除く)をクリアしており、WAKOECO® SHIELD(ワコーエコシールド)を塗装したウレタンフォームは、ガスバーナーの火を当てても穴が空きません。
断熱材のなかには燃えやすい素材や、燃焼時に有毒なガスを生じる素材を用いたものもあるため、火災による被害をできる限り回避するといった観点で、WAKOECO® SHIELD(ワコーエコシールド)は頼もしい性能を発揮します。
6-4.アレルゲンの発生や壁面の汚れ防止にも効果を発揮
ホルムアルデヒドフリーであるため内装工事にも利用でき、塗料を構成するセラミックスはアレルゲンの発生や壁面の汚れを防止します。
室内のホコリ、空気中の水分により発生するカビやアレルギー物質が壁面へ吸着することを防ぎ、断熱による快適性の維持だけでなく健康を脅かす要因の排除にも効果を発揮します。
7.まとめ
断熱塗料で得られる効果は断熱効果にとどまらず、節電効果や防音効果など多岐にわたります。住宅やオフィス、工場の快適性を高めるための手段として有効に働くでしょう。
ただし、断熱塗料も万能ではありません。一般的に販売されている機能性のない塗料よりも価格は高く、塗布を検討している建物によっては満足な効果を得られない可能性もあります。
塗装工事は塗布面積に応じて数十万、数百万円の費用がかかるため、本記事で述べたポイントを踏まえて十分に検討の機会を設けてください。