近年の夏は猛暑が常態化し、職場での熱中症リスクは年々深刻化しています。屋外作業はもちろん、工場や倉庫などの屋内でも高温環境となるため、熱中症による労働災害は後を絶ちません。こうした状況を受け、国は労働安全衛生法をはじめとする関連法令を改正し、事業者に対して熱中症対策をより強く求める流れを進めています。そこで本記事では、熱中症対策義務化の内容と企業が対応すべき具体的なポイント、今すぐ取り組める熱中症対策を解説します。義務化の内容や有効な対策を知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
1. 熱中症対策義務化とは?企業が知っておくべき法改正
2024年、職場における熱中症の死傷者数は1,257人に達し、統計開始以降で最多を記録しました。 
出典:厚生労働省「2024 年(令和6年) 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」より
熱中症は死亡災害に至る割合が高いうえ、今後も気候変動によるリスクの増加が懸念されています。この状況を受け、国は自治体や企業に対して熱中症対策を求める法改正を行いました。 企業に関わりがあるのは、「改正労働安全衛生規則」と「改正気候変動適応法」に基づく熱中症対策です。
| 法律 | (施行日) | 企業が行うべき対策 | 強制力 |
|---|
| 改正労働安全衛生規則 | (25年6月~) | 1.職場の熱中症対策 | 罰則付きの義務化 |
| 改正気候変動適応法 | (24年4月~) | 2.熱中症特別警戒アラートへの対応 | 努力義務 |
| 改正気候変動適応法 | (24年4月~) | 3.クーリングシェルターの開放(任意) | (指定施設になると)解放義務 |
それぞれの内容については、次章で詳しく解説していきます。
2. 対策1.改正労働安全衛生規則による職場の熱中症対策
2025年6月1日、改正労働安全衛生規則が施行されました。 これにより、一定条件下で作業を行う事業者には、職場における熱中症対策が法的に義務付けられています。
参考:厚生労働省「改正労働安全衛生規則の一部を改正する省令」
2-1. 義務化の対象になる仕事は?
以下の条件に該当する作業が義務化の対象となります。
- 暑さ指数(WBGT)28度以上 または 気温31度以上の環境下で
- 連続1時間以上 または 1日4時間を超えての実施が見込まれる作業
※暑さ指数:熱中症予防のための指標で、気温や湿度、輻射熱など複数の因子で構成される 特に対象となりやすい仕事は建設業や土木業、製造業や物流業、警備業です。屋外の作業だけではなく、熱がこもりやすい工場や倉庫内の作業も該当する点に注意しましょう。
2-2. 義務化の対象企業に求められる熱中症対策
労働安全衛生規則の基本方針は、「見つける→判断する→対処する」のステップに基づいて行われます。事業主に求められる具体的な義務は次の3点です。
- 報告体制の整備 まず、熱中症の早期発見に向けての仕組み作りが求められます。作業場所の暑さ指数の定期測定や、健康状態を確認する現場担当者や責任者の設置、それらのルール化などが該当します。万が一体調が悪化した際の緊急連絡先の把握や、休憩場所の確保も欠かせません。
- 措置手順の作成 次に、熱中症の重篤化を防ぐための措置フローの作成が必要です。熱中症の疑いのある従業員を発見した際に何をすべきか、応急措置と社内や医療機関への連絡、経過観察の流れをわかりやすくまとめ、全従業員に共有できるようにします。
- 定めた内容を関係者(労働者)に周知する 報告体制と措置のフローを整えた後は、すべての従業員が把握できるようにしなければなりません。まとめた資料をただ配布するだけではなく、口頭で繰り返し伝えること、従業員全員が参加する訓練を定期的に行うのも効果的です。
2-3. 対策を怠ったときの罰則とリスク
措置フローを作成しないなど、対策を怠った事業者には「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。罰則だけではなく、労災認定や損害賠償の請求、企業イメージの低下といった経営リスクも無視できません。
3. 対策2.熱中症特別警戒アラートへの対応
2024年4月1日に全面施行された改正気候変動適応法により、暑さ指数35以上が予測される際に「熱中症特別警戒アラート」が発表されます。
| アラート | 暑さ指数 | 概要 |
|---|
| 熱中症警戒アラート | 33以上 | 熱中症の危険性が極めて高くなるときに発表される |
| 【法改正で新設】熱中症特別警戒アラート | 35以上 | 広域的に過去に例のない危険な暑さが予想される際に発表される |
上記アラートの運用期間は例年4月~10月頃で、危険な暑さが予想される前日14時または17時、当日の朝5時頃に発表されます。ニュースや天気予報、気象庁などのサイトで確認できるため、運用期間中は注視しておくようにしてください。 なお、本改正において直接事業者に義務付けられている対策はありません。しかし、アラート発表時に改正労働安全衛生規則に該当する作業を続行した場合、「職場における適切な対策を怠った」とみなされ、罰則対象になる可能性はあります。 熱中症特別警戒アラートと改正労働安全衛生規則に基づく熱中症対策は密接に関係しています。アラートの発表を受けた企業は、業務内容の変更や作業の中止・延期を検討するなどして、改正労働安全衛生規則とあわせた総合的な対応を心がけてください。
4. 対策3.クーリングシェルターの開放
先述した改正気候変動適応法により、クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)の運用も本格化しました。クーリングシェルターとは熱中症特別警戒アラート発表時などに危険な暑さから身を守るための施設で、市町村によって指定されます。 クーリングシェルターの多くは図書館や公民館などの公共施設ですが、任意で民間企業が所有施設を指定することも可能です。指定施設を所有している企業は、環境整備や利用者の安全確保、アラート発表時の一般開放などが義務付けられます。 施設開放義務がない企業であっても、屋外の作業が多い仕事や外回りが多い営業職がいる場合、クーリングシェルターを必要とする機会はあるはずです。事前に地域の施設を把握しておき、従業員に周知しておくとよいでしょう。
5. 重視したい「作業所における暑さ指数」の把握と改善
企業に求められる熱中症対策では、作業環境に潜むリスクを把握し、継続的に改善しているかどうかが重要視されます。 熱中症対策を行う際は、まず作業所における暑さ指数(WBGT)を把握してください。暑さ指数は気温・湿度・輻射熱の3要素で構成される指標で、作業所に以下のような「暑さ指数計」を配備すれば測定できます。
出典:厚生労働省「暑さ指数(WBGT)について」 暑さ指数は、水分補給や休憩時間の確保など従来の熱中症対策だけでは下げにくい指標です。従業員個人がいくら熱中症対策を徹底していても、作業環境が悪ければ暑さ指数はどんどん上昇し、熱中症リスクも高まるため注意してください。 暑さ指数が高い作業環境を改善するには、屋内外問わず「日差しをできる限り遮ること」が重要です。屋外であればできる限り作業所や休憩所に日陰を創出し、帽子やヘルメットの着用を必須としましょう。屋内作業の場合は、屋根や外壁など建物への日差しを極力防ぐ遮熱対策が有効です。 建物の遮熱対策は今すぐ取り組めるものが多いため、次章で詳しく紹介しましょう。
6. 企業が今すぐできる建物の遮熱対策
暑さ指数を下げて作業環境を改善する方法として、建物そのものの遮熱対策は非常に有効です。遮熱対策には次のとおりさまざまな選択肢があるため、建物の構造や作業状況にあわせて検討してみてください。
| 施工箇所 | 具体的な対策方法 | 効果 |
|---|
| 屋根・壁面 | 遮熱塗料・断熱塗料 | 屋根や壁の表面温度上昇を抑制できるため効果が高く、断熱材や緑化より低コスト |
| 屋根・壁面 | 断熱材 | 冬の保温効果も期待できるが、工期やコストがかかりやすい |
| 屋根・壁面 | 屋上・壁面緑化 | 植物の蒸散作用で建物を冷却し、景観や環境配慮で企業イメージも向上 |
| 窓・開口部 | 遮熱フィルム・シート | 手軽に施工でき低コストだが、外側の対策と比べて効果は限定的 |
| 窓・開口部 | 外付けシェード | 窓の外側で日差しを遮るため、室内対策より効果が高い |
| 窓・開口部 | 二重窓(内窓) | 遮熱に加えて防音や冬の断熱効果もある |
| 室内・設備 | 機械への遮熱カバー | 室内への放熱を抑えて空調効率を高める |
| 室内・設備 | 高効率換気扇・シーリングファン | 空気の循環で室温と体感温度を下げるが、継続的に電気代がかかる |
上記のうち、比較的取り入れやすく改善効果が高い方法の一つに「屋根や壁への断熱塗料の塗布(断熱塗装)」があります。
6-1. 改善効果が高い屋根や壁への断熱塗装
断熱塗装が暑さ指数の改善に効果が高い理由は次のとおりです。
- 屋根や外壁からの熱移動を抑えることで、室温上昇を防ぎやすい(→空調コストの削減にもつながる)
- 建物(工場・倉庫など)の稼働を止めずに施工できるケースが多い
- 大がかりな断熱材などの工事に比べて、工期やコストを抑えやすい
- 塗布だけで一定期間効果が持続し、光熱費がかからない
- 壁や屋根の熱伝導を抑制するため、年間を通じて室内の空調管理をしやすくなる
断熱塗料とは、特殊な顔料によって太陽光による熱の伝導を抑制する塗料です。 よく比較される「遮熱塗料」は太陽光を反射して熱を防ぎ、主に夏の使用に限定された塗料です。一方で断熱塗料では熱伝導を抑える効果があり、冬場には暖めた空気を外に逃がしにくいという特徴があります。よって、年間を通して室温をコントロールしやすいのがメリットです。 断熱塗料の中には、工場や倉庫など、暑さが作業環境に直結しやすい建物向けに開発された製品もあり、その一例が「WAKOECO断熱」です。 WAKOECO断熱は、断熱効果に加えて結露防止や保温、防音、不燃といった特性を備えており、国内外で特許を取得した技術が用いられています。夏場の熱中症対策だけでなく、冬場の作業環境改善にも寄与するため、年間を通じた職場環境の安定化が期待できるでしょう。 断熱塗料は一度施工すると10~15年程度の耐久性が見込めるケースもあり、空調負荷が大きい建物や、中長期的に作業環境を改善したい企業に適した対策の一つです。
7. まとめ
熱中症対策の義務化は、高温下での作業が発生する企業にとって避けて通れない課題です。 企業は熱中症を重要な労働災害として捉え、報告体制の整備や緊急時の措置手順の作成、全従業員への周知を徹底する必要があります。 「何から始めればよいかわからない」という企業は、まず作業所における熱中症リスクを把握するため、暑さ指数の測定から始めましょう。環境要因によるリスクが高い場合は、建物の遮熱対策を含めた改善策を検討してください。 作業環境の改善策として、屋根や外壁への断熱塗装は費用対効果の高い選択肢の一つです。「WAKOECO断熱」であれば熱中症対策だけではなく、保温効果や節電効果、防音効果もあるため、年間を通して快適な作業環境を構築できます。熱中症対策を機に職場環境の見直しを検討している企業は、断熱塗料も選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。